決定版 日中戦争 (新潮新書)

  • 新潮社 (2018年11月15日発売)
3.67
  • (2)
  • (15)
  • (9)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 164
感想 : 16
4

● 日中戦争の位置づけについても、太平洋戦争の勃発によって中国は、世界内の「反ファシズム統一戦線」の重要局面である中国戦線を一手に担い、日本軍を消耗させたがゆえに、連合国の「世界反ファシズム戦争」の勝利も実現した、と言う第二次大戦像は動かしがたいことを確認することにもなった。中国以外の連合国が抗日戦争の勝利に貢献したと言う側面が入る余地が少ないのである。この傾向は、習近平政権になってさらに強まりつつある。
●張作霖爆殺→満州事変→盧溝橋事件
日中戦争は、おそらく偶発的に発生した盧溝橋事件が、その後の両国の対応によって拡大した典型的なエスカレーションであった。
●南京事件で虐殺等が起こった原因としては以下の点が指摘されている。日本側では第一に事変であったため、捕虜の取り扱いに関する指針や住民保護を含む計画が欠けており、また取り締まる憲兵の数が少なかった点がある。第二に食料や補給を無視して攻略をした結果、略奪行為、不法行為を誘発した.。第3に日本人一般に広く見られた、捕虜に対する嫌悪感及び中国人に対する蔑視感情などである。中国側としては、防衛作戦の誤りと指揮統制の放棄、民衆保護対策の欠如に言及している。
●当初短期決戦で中国側の戦意を喪失させて勝利を収めるつもりであったが、中国側は持久戦を持ってそれに応じた。その後日本の北部仏印進駐はそれまで基本的に切り離されていた日中戦争と第二次世界大戦を結びつける結果となった。
● 1937年10月、ライフに空襲された上海近郊と思われる駅で1人泣き叫んでいる赤ん坊を写した写真が掲載された。半日イメージの形成に大きな役割を果たした。
●日本が宣伝戦に失敗した要因。国民性に加え、軍事的勝利に対する自信から宣伝を軽視していた。
●実のところ、カイロ宣言は研究者泣かせのテーマである。外交文書が十分に保存されていないのだ。中国も同様で「蒋介石日記」や王寵恵の回想などが基礎資料となる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本史全般
感想投稿日 : 2019年12月17日
読了日 : 2019年12月17日
本棚登録日 : 2019年9月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする