世紀末画廊 (河出文庫 し 1-51)

著者 :
  • 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
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感想 : 9
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かなり昔に購入して積んでいた澁澤龍彦の芸術エッセイ。
ジェームズ・アンソールが冒頭に出てくるのに心惹かれて買ったんだろう。たぶん。

最初の『世紀末画廊』は興味深く読めたんだけど、そのあとの幻想芸術、特にシュルレアリスムのあたりは、難解で読むのに苦労した。エッセイなのに……。
面白かったし、さすがとは思うものの、読み手の私に芸術的素養が欠けているのもあり、なかなか難しかった。
ただ、とにかく、サドの信奉者の面目躍如といった感じのセレクトではあり、知らない画家も多くて検索するたび出てくる絵にちょっとぎょっとしたりした。すごい。



子どもの頃、親が美術館や博物館に休みの日に連れて行ってくれた。「ふーん、ピカソ」「ふーん、浮世絵」「ふーん、ゴッホ」といった感じで、連れて行ってくれるからには一通り見るけれど、そこまでの感動はそんなに得られていなかった。
多分、小学校6年生の時、アンソールの『仮面の中の自画像』を見たときに、初めて芸術作品に感動した。所蔵のメナード美術館は、比較的実家から近く、その時が初めての訪問ではなかったと思う。親がシャガールが好きで、メナード美術館はわりかし頻繁にシャガール展を開催していたような記憶があるので、それで常設展示の『仮面の中の自画像』と、その解説を見て感動したのだ。
小学6年生、思春期のただなかで、親への反発もあり、「誰も自分の本当の所をわかってくれない」と思っていた頃。自分の周囲の無理解者を骸骨や不気味な仮面をかぶった存在として、その存在に取り囲まれる自画像、というのに共感したのだ。
アンソールの場合は、もちろん20人展に拒否されたりといった経緯があっての作品で、ローティーンの小娘の自意識とは全然違うけれど、でもそうした視点が私には絵画に興味を持つきっかけになったのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2020年12月9日
読了日 : 2020年12月9日
本棚登録日 : 2020年12月9日

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