想像ラジオ (河出文庫 い 18-4)

  • 河出書房新社 (2015年2月6日発売)
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東日本大震災で亡くなった人と生きて残された人をテーマにした一冊。

東日本大震災から今年で10年が経った。
自分自身、亡くなった人への想像力を働かせることができなっていると感じている。それを自分の近しい人で東日本大震災で被害を受けた人がいても、亡くなってしまった人はいないからかもしれないと思っていた。つまり、死者に近しい人しかその死を悼むことができないのではないかと。
しかし、この話を読んで、それは違うのではないかと感じだ。
この話のなかで、東京大空襲や広島・長崎の原爆投下による死者を悼む人が描かれているところがある。それらに直接的に関わっていたわけではない人が、年長者からの伝聞や感受性が豊かな人(この表現がよいか分からないが)による言葉を通じて、遠い過去の死にも思いを馳せていた。ならば、私自身が東日本大震災での被害者の方に気持ちを向けてもおかしなことではない。
想像力がなくなっているのは自分の立場によるものではなく、自分が怠惰なだけだったのである。

作者のいとうせいこうさんは、東日本大震災後に被災地の福島を訪れ、そこに住んでいる人の寄り合いに参加し、被災者の方々の話に耳を傾ける活動をしてきた。
そのような生の言葉を聞き続けたからこそ書き上げられた作品だと思う。

東日本大震災後を生きる人にとって大切な本になると思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年12月25日
読了日 : 2021年12月25日
本棚登録日 : 2020年10月29日

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