前から謎だと(少なくとも私は勝手に)思っていた、量子力学と生命のメカニズムとのミッシングリンクをバリバリと解説してくれている本。いやあ、こういう本を探していた!
我々の眼に見える間尺にあった物理現象のほとんどはニュートン力学で説明でき、その中にある秩序や平衡性は熱力学が作用している。そしてそれら物理現象の最小単位である原子や量子の振る舞いの法則が量子力学であり、生命は実にこの3階層をすべて貫き通す形で運営がなされているらしい。
大半の生命現象はニュートン力学と熱力学で説明ができてしまうわけだが、それでも生命にはそれでは説明がつかない未解明な部分がある。量子力学が作用する生命現象は、生命力そもののである酵素の働きや光合成、あるいは生物が匂いを嗅ぎ取る仕組みや、渡り鳥や魚が長距離移動をする際に使う磁気感覚、そしてまだ未証明ではあるが、遺伝や生命の起源、あるいは精神活動にまで及ぶらしい。
具体的には量子力学がもつ不気味な作用である、量子のもつれ効果(生物の磁気感覚、光合成)やトンネル効果(酵素の作用や、生物の嗅覚、遺伝)を利用して生命はその基礎的活動を成しえているらしい。
ファインマンは「作ることができないものは、理解したたことにはならない」と言ったらしいが、現時点で人類は新たな生命を作り出せていない。なので本当の意味で量子力学と生命との関係を解明したとは言えない状態なのだろうが、この本の中でも触れられているように、原子細胞を作り出す試みは科学の最先端で続けられており、その際にはこういった量子生命学の発展を必ず経て人工生命は作り出されることになるのだろう。今後の発展が楽しみな科学分野である。
- 感想投稿日 : 2016年3月13日
- 読了日 : 2016年3月8日
- 本棚登録日 : 2016年3月13日
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