新版 史的システムとしての資本主義

  • 岩波書店 (1997年8月22日発売)
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感想 : 16
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高等教育に関心を持ちながら本書の一部を読んだ。大学は太古の昔からあったのではなく、中世ヨーロッパから生まれ、近代に発達した。本書でいう「近代世界を支えるイデオロギーのひとつ」であり、世界の大学全体が「史的システム」なのだろう。

大学は、民族集団・職業・経済的役割と強固な関係を保ちながら発展・拡大したともいえよう。大学での教育・訓練を通じた労働力の配置換え装置の側面もある。ユニバーサル・アクセス化したとはいえ、大学には、その中で学問分野・研究分野・役割や機能以外に、厳然とした「差」がある。本書でいう「適当な労働力をつくりあげ、再生産してゆく上でもっとも重要なもの」として大学が機能し資本主義を補助したのではないか、という仮説も成立し得る。

また、科学を通じた真理(veritas)を探究は、大学が行う一般化作業と、普遍主義のイデオロギーとなった旨紹介されている。今日の多くの高等教育に関する政策文書で帰結先となったり大切な論拠となっているのが、このフレーズだったりする。これを越える「事実」はなかなか見つからないのだろう。本書でいうように、「真理」以上の「アヘン」は無いのかもしれない。普遍主義に立脚した、高等教育の西欧化、近代化、さらに国際化という表現は、関係者には便利に正当化されて活用されているふしがある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2012年5月15日
読了日 : 2012年5月15日
本棚登録日 : 2012年5月15日

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