グリモリ好きにとってはこのところ目立った収穫が無かっただけに、本書は待望の、そしてもしかしたら本当に「最終報告」となってしまうかもしれない一冊だ。
冒頭、5億4千万強奪事件の経緯から語り起こし、要所に未公開の捜査調書を織り込んだ事件の概要、警察の追った容疑者像と、既知の事柄も含め、グングン読ませる。
そして圧巻はやはり「真犯人」と銘打った本書が初めて明かす容疑者像。正確には容疑者グループの中の実行犯リーダー格の人物なのだが、それにしてもあの「かい人21面相」の脅迫状の醸し出す雰囲気と「彼」のたたずまいが見事にハマっているではないか。
印象に残ったのは終盤、当時の捜査員(現職府警幹部)に「真犯人=彼」の可能性をムキになって否定される場面。あれだけ警察のプライドを踏みにじられ、刑事人生をかけてそれでもホシを挙げられなかった屈辱が、「今になってお前なんかに」という屈折した感情になって爆発する。人間とは、人生とは何ともやっかいなものなのだ。
小学生のときこの事件に出会い、何の因果か人生観の深いところに影響を受けてしまった身としては、一抹の寂しさが残る「最終報告」だった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年12月22日
- 読了日 : 2007年11月1日
- 本棚登録日 : 2013年12月22日
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