どの新聞にも必ず掲載されている人生相談だが、これは考えようによっては妙なもので、相談といいながら相談者よりもむしろ紙面の向こう側の野次馬である一般読者に対してどう答えるかを見せる芸として成立している気配がある。ネットにあるヤフー知恵袋のような実用一辺倒のものではなく、時に相談者ですら何を相談しているのかよくわかっていないのではないか?と思われるようなものにも対峙する、もはや相談にかこつけた人生観の披歴の場、相談回答文芸とでも呼べばよいのだろうか。
本書の著者もその回答がSNSでも「よくぞ言ってくれました!」と時折バズる人気ぶりである。タイムラインに流れてきた名回答を眺めていると、著者は快刀乱麻を断つごとく切って切って切りまくる、時に読者が藁人形をこしらえて差し出したくなるような、そんな芸風かと勝手に想像していたのだが、案に相違して時に叱咤し、時に背中をそっと押し、時には相談者さえ気づいていない隠れた悩みを引き出し、と、老練多彩な技を駆使しており、一冊を通じてなかなか読ませる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2022年2月9日
- 読了日 : 2022年2月4日
- 本棚登録日 : 2022年2月4日
みんなの感想をみる