新書605 大奥の女たちの明治維新 (朝日新書)

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  • 朝日新聞出版 (2017年2月13日発売)
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何か「大きな出来事」が伝えられたような場面で、「それは大変な事だ」と思う他方で、「〇〇と言えば…△△というようなモノも在った筈で…その△△関係はどうなったのだろう?」と思う場合が時々在るように思う。こういう事例は、現実に発生した何かの事象に関する事柄の他、歴史の教科書に載っているような事柄についても在り得ると思う。
“江戸幕府”から“明治政府”に切り替わったという事態…これは、適切な譬えなのか否かは判らないが…何となく思うのは、江戸幕府という「大きな会社」について「解散・清算」ということになり、明治政府は「事業や財産等を継承する法人」という役目を担う…漠然とそういうようなイメージを抱く。
江戸幕府が「解散・清算」ということで、明治政府が「事業や財産等を継承する法人」という役目を担うイメージは、例えば幕府のトップたる将軍の居城だった江戸城が“宮城”ということになって政府が戴く天皇の御所、住まいになり、江戸の町を治める機構が政府によって一定程度継承されていることや、幕府の仕事をしていたような人達が新政府に職を得た例が在ること等から想起したのだが…それでも、江戸城の中で非常に大きな存在だったという大奥や、幕府体制の下で非常に多くの“消費者”だった武士達が江戸に居たことで商いを成立させていた商業者等は「どうなった?」というように思ってしまう…
本書では、大奥、幕臣、国外へ留学した幕臣などの子女、華族として東京に住むことになった各地の大名一家、幕府体制下と様相を大きく変えた明治の初めの東京の様子、江戸の商人等と、「そう言えば…どうなった?」という人やモノを捉えて巧く説いてくれる内容だ。
こういう「興味深い“隙間”」というようなものは、歴史の中には随分と在るのだろう。大変に愉しく読了した!!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2017年3月22日
読了日 : 2017年3月22日
本棚登録日 : 2017年3月22日

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