ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社 (2024年2月16日発売)
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感想 : 9
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連載が修了し、物語の最後迄が単行本化もされている、好評な漫画作品『ゴールデンカムイ』をタネに、作中世界で取上げられているアイヌ文化に纏わる話題等を供する本である。同じ著者による「前著」で言及していることと一部は重複するが、それを避けても「こんなにも多くの話題」ということで驚く面も在る。
本書は「前著」以上に、アイヌの一年の暮らしというような事柄や、独自な精神文化を背景にしていると考えられる社会の中での人々の所作や、何かの言い方というような事柄への言及が多い。それらは非常に興味深く、『ゴールデンカムイ』という漫画の描写等を例として示すことで内容が判り易くもなっている。
更に、『ゴールデンカムイ』の物語でも作中人物達が樺太へ渡り、色々な因縁が明らかになり、様々な人達との交流等が生じているというのだが、本書でも「樺太アイヌや他の諸民族、更にサハリンに在ったロシア人」というようなことに関連する事項について、各々の事項に詳しい方達のコラムが掲載され、著者がコメントも加えている。それらの内容が秀逸である。「樺太アイヌや他の諸民族、更にサハリンに在ったロシア人」というようなことは、実は余り知られていないと思う。『ゴールデンカムイ』という漫画をヒントにしながら、余り知られていないことを紹介する形になっているのは非常に好いと思う。
広い範囲でアイヌは活動していたが、人口密度は低い。それ故に「方言」というようなモノが色々と在るのだという。更に樺太と北海道となると、身近な単語というレベルで差異も生じているようで、本書にはそういう説明も在った。そういう様子でも、或る程度広い範囲で往来し、交易等をしていたのがアイヌである。
自身は『ゴールデンカムイ』に関しては、今年になって実写映画を愉しく観たという関わり方であり、作品に通じているという程ではない。が、それでもその漫画を話しの入口や材料にしながら、北海道や樺太のアイヌ等に関して語られている本書の内容は凄く興味深い。新書としてはかなり分厚いのだが、ドンドン読み進められる。興味深い内容で、頁を繰る手が停められなくなる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2024年2月28日
読了日 : 2024年2月28日
本棚登録日 : 2024年2月28日

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