信頼―社会的な複雑性の縮減メカニズム

  • 勁草書房 (1990年12月10日発売)
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この世界では自分も他人も自由に行動するため、あらゆる可能性がある。約束をしても守ってくれないかもしれない。自分も他人も自由気ままに生きている。とても複雑。▼「こうしなさい」というルールや慣習によって、こうした複雑さを減らすことができる。君の役割はこれ、私の役割はこれ。役割に沿って行為を選択。意思決定で一定のものを選び、他のものを排除する。無数の可能性を秩序化。こうして、見知らぬ人が作ったものでも食べることができる。他人が運転する車でも安心できる。見知らぬ相手でも取引できる。人(人格・人柄)への信頼ではなく、ルール・法(行為の選択の範囲を限定する構造)への信頼が、現代社会を支えている。人間の共同生活の秩序を支えている。▼選択の可能性が多く、複雑で不確実であるがゆえに、行為選択の範囲を限定する構造が生まれる。Luhmann, 1973

機械は部品などそれ自身の要素を自ら生産しない。しかし、生物は細胞(要素)を生産し続けることによって生き続ける。自分で自分自身をつくりだすというサイクルを反復することで、自律的に秩序が生成される。▼社会も同じように、行為(要素)が生まれ続けることで、その全体を維持している。個別の要素(行為)が先にあって、それが集まって繋がって全体(社会)になるのではなく、全体(社会)が先にあって、その枠組みのなかで個別の要素(行為)が可能になるのでもない。Luhmann, 1984

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: 社会学・政治学
感想投稿日 : 2021年7月25日
本棚登録日 : 2021年7月25日

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