第二次世界大戦 1 (河出文庫 チ 3-1)

  • 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
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感想 : 27
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第二次世界大戦において大きな役割を果たした英国首相ウィンストン・チャーチルが後年当時の情勢を振り返って書いた伝記。第1巻は開戦前からチャーチルが首相の任に着くまでが記されている。
あくまでチャーチルの主観で書かれているものであるものの、第二次世界大戦が起こる経緯が、関係する諸国の政治家との交流の記録とともに説明されている。なぜ開戦にまで至ってしまったのか。防ぐ道はなかったのか。何が失敗だったのか。あとからなら何とでもいえる、と思うかもしれない。しかし、政治家の判断、国民の世論、他国に対する交渉と妥協点、防衛力と平和希求の関係性と様々な視野から語り出されており、当時の感覚を論拠としている以上、疑いなく重要な見解ではなかろうか。
軍縮や圧力をかけすぎない方向性の、開戦前のイギリスの国民の世論と、ネヴィル・チェンバレンの平和の求め方が、どこか日本的であると感じるのは私だけだろうか。現代は当時とは事情が違えど、安全保障問題を考えるうえで、最も現代に近い時代の大戦について知っておくことは不可欠なのではないか、と思わされる一冊であった。
チャーチルの文章は軽快なので比較的読みやすいものの、地名・人名がピンと来ない部分や、非常に詳細に記している点でやや読みにくい部分もある。第二次世界大戦前後の状況について、他書で概要を先に確認しておいた方が良いかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 所有物
感想投稿日 : 2018年8月4日
読了日 : 2018年8月1日
本棚登録日 : 2018年8月4日

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