という、はなし

著者 :
  • 筑摩書房 (2006年3月1日発売)
3.73
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本棚登録 : 747
感想 : 111
5

個人的に、とてもスキ!な24このやさしいイラストと1つのイラストに3ページのユニークな文章で構成された本。

どうやらイラストレーターのフジモトマサルさんが描いたイラストに合わせて吉田篤弘さんがアンサーの形で文章を添える、というバトンの受け渡しのような企画だったらしい。
なるほど、そういうことかぁ!とあとがきを読んで納得。
文章は、読み始めはエッセイかな?と思いきや、どこか童話チックで、哲学的でもあり、そうでもなかったり、でもなんだか心になじむ。そしてオチがよき。これを物語と読んでいいのかはわからない。不思議。物語、という解釈でいいのかな。「という、はなし」なのだから物語か。良き。

「読書の情景」というテーマでイラストも文もかかれているので、どこを読んでも本ひいては読書への思いに溢れている。
そのようなテーマだったとは全く知らずに読み始めたけど、読書の日、そして深秋の夜に読むのにふさわしい本だった。と嬉しくなりました。
全体的に好きだけど、特に好きだなと思った「はなし」は、「夜行列車にて」「背中の声」「読者への回復」「虎の巻」「眠くない」「影の休日」「背中合わせ」「日曜日の終わりに」…あたりですね。と書いてみて、ほとんど半分じゃん!笑と自分で笑ってしまった。うん。好きなんです。

さらに好きなはなしの好きな文章を一部備忘録がてら引用させていただきます。
少しのネタバレも嫌という方はご注意ください。





…そもそも自分が何者であったのか、ようやく思い出す。「読者」であること。肩書きはそれだけでいいのだ。ー読者への回復より

「しかし、わたくしの休日が長くなればなるほど、人々が<陽>と<笑い>を忘れます。…<影>は<陽>があってのもの。人があってこそのものです。」
だからやさしい<影>は、雨がすぐにやむことを願って、さっと読み終えることのできる薄手の本しか読まないのです。ー影の休日より

本は死なない。
どうやらこの一行を誰かに伝えたくて、またあたらしい本をつくる。毎日、あたらしい次の本を想い、書いたり、編集したり、装幀したり、印刷したり、販売したり、宣伝したりする。
本は人よりずいぶん長く生きる。ー恋と発見

以下、備忘録がてら各話のタイトルを。

夜行列車にて
背中の声
読書への回復
灯台にて
虎の巻
待ち時間
地上の教え
何ひとつ変わらない空
居残り日録
眠くない
かならず
影の休日
寝静まったあとに
話の行き先
寝耳に水
ひとり
背中合わせ
とにかく
海へ
希有な才能
日曜日の終わりに
暗転
時間を買う
恋と発見
あとがきのまえがき
あとがきのあとがき



読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童文学/絵本
感想投稿日 : 2022年10月28日
読了日 : 2022年10月28日
本棚登録日 : 2022年10月28日

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