本書は9つの章から構成されていて、第七章までは文章をわかりにくくしている要素について説明している。
第七章までは以下のようなタイトルになっている。
第一章 なぜ作文の「技術」か
第二章 修飾する側とされる側
第三章 修飾の順序
第四章 句読点のうちかた
第五章 漢字とカナと心理
第六章 助詞の使い方
第七章 段落
各章は命名から想像できる通りの内容になっていて、具体例を交えながらの説明があり、大抵の分かりづらい例は共感できる。
第七章までは著者の批判的精神はたまに感じる程度だったが、第八章からは著者が無神経と感じる文章について感情を顕にして例を挙げて解説をしている。むしろここからが本番といってもいいだろう。
第八章の冒頭では、新聞の投書欄に書かれた文章を例に挙げて以下のような感想を一言目に提示している。
> 一言でいうと、これはヘドの出そうな文章の一例といえよう。...なぜか。あまりにも紋切型の表現で充満しているからである。手垢のついた、いやみったらしい表現。こまかく分析してみよう。(第八章 無神経な文章)
他にも、書き手がおもしろい文章だと思っていることが明に表れているような例を挙げて、落語家の演技と比較をしたりして批判をしている。
> 美しい景色は決して「美しい」とは叫んでいないのだ。その風景を筆者が美しいと感じた素材そのものを、読者もまた追体験できるように再現するのでなければならない。(第八章 無神経な文章)
第九章「リズムと文体」では、著者は高度な文章論と言いつつとくに多くの具体例を挙げて解説をしていて、文章のリズムが乱れることを「血が出る」という表現で書いている。
> 名文で知られるジャーナリストの文章を例にして、リズムを乱したらどんなに「血が出る」のかを見てみよう。(第九章 リズムと文体)
本書は日本語の文章を書く際の tips を知るための情報源としてはもちろん役に立つが、文章に対する感受性がとても強いであろう著者の抑えきれない感情からくる色々な文章への批判は、著者の感情の追体験をするだけの表現力をもっていて、二重に楽しめる内容となっている。
- 感想投稿日 : 2024年3月3日
- 読了日 : 2024年2月28日
- 本棚登録日 : 2024年2月28日
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