香君 下 遥かな道

著者 :
  • 文藝春秋 (2022年3月24日発売)
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 もう流石の一言。これだけ情報量が多い設定を、巧みに言葉を操って、魅力に溢れた物語に仕上げる上橋さんの技術には、本当に感嘆せざるを得ない。「守り人」「獣の奏者」「鹿の王」この3作とはまた違った雰囲気の物語。個人的にはこの作品が一番好きかも。今回のテーマである香りを表現するために、作中では香りを「声」に喩えている。香りという目に見えないものを可視化するために、「声」を使ったのは上手い表現だ。そしてこの物語の軸となるオアレ稲。かつて人々は、この奇跡の稲の力を使って帝国を作り上げ、香りで万象を知るという<香君>の庇護のもと、発展を続けてきた。しかしある時、オアレ稲に虫害が発生してしまう。オアレ稲に依存してきた人々は、飢餓の危機にさらされる。人並外れた嗅覚を持つ少女アイシャは、このオアレ稲の秘密に向き合っていく。オアレ稲の隠された謎とは何か、なぜアイシャはまるで香君のような力を持っているのか、気になることが多すぎて、一気に読み進めてしまった。それほど面白く、魅力的な登場人物とストーリーに存分に浸ることができた。上橋菜穂子さんらしさもよく出ていた素晴らしい作品。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年6月5日
読了日 : 2022年6月5日
本棚登録日 : 2022年2月26日

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