岸辺の旅 (文春文庫 ゆ 7-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年8月3日発売)
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本棚登録 : 973
感想 : 142
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朝ドラの深津絵里が17歳の役を!すごい!となり深津絵里を検索したときに映画『岸辺の旅』のことを知った。原作が小説だったので読んでみることにした。

最初からなかなか掴みどころがないふわふわとした話だと感じた。死んだと思って3年間探し続けた夫が急に目の前に現れた時、そのときの二人の会話からああ、この夫は死んだんだろうなとは何となくわかる。そのあとすぐにふっと消えてしまうのだろうと思ったら、なかなかどうして、ずっとそばにいる。普通にご飯も食べているようだし、主人公以外の人にも見えているようだ。
いわゆる幽霊なの?なんなのこの存在は?と思いながら、いつ消えるのか、いつ消えるのかと思いながら読むけどなかなか消えないので、あれ、これはこのままいくのか?と淡い希望も持つ。

このままずっとそばにいてくれたらいいのにな、と思うけど、そうはいかなさそうだということはきっと主人公にも初めから分かっている。分かっているからこそ、夫のことをしっかり見つめていよう、この手からすり抜けないように掴んでいようとする姿が切ない。

ちょっと中だるみしそうかな…と思った時に、夫には実は浮気相手がおりその人と会って話をするシーンはまた物語に惹きつけられるきっかけになった。夫がいなくなった時に見つけてしまった浮気相手からの手紙が、怒りというよりは夫を探そうという気持ちを応援するお守りのような存在になっていて、そのある意味不謹慎な内容が夫を失踪や死から遠ざけていると感じられて救われていたんだろうなという辺りには、人間の複雑な心のありようを感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年1月9日
読了日 : 2022年1月9日
本棚登録日 : 2022年1月9日

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