BEATLESS 上 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2018年2月24日発売)
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本棚登録 : 238
感想 : 8
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AI技術が発達し、人々の生活のほとんどが自動化され、hIE(ヒューマノイド・インターフェース・エレメンツ)と呼ばれるアンドロイドが社会に浸透した世界。17歳の少年・遠藤アラトは、レイシアと名乗る美しい少女の"かたち"をしたhIEと出会う。彼女は「人類未到産物」と呼ばれる、人類の知能を遥かに凌駕した特別なhIEの一つであった。美しく、人間のようなレイシアに惹かれたアラトは、彼女の望むがままにオーナー契約を結ぶ。レイシアという特別なhIEを手にしたその日を境に、アラトは"人類"と"AI"の在り方を巡る大きな争いに巻き込まれていく―――。

「"アナログハック"―――「人間のかたちをしたもの」に人間がさまざまな感情を持ってしまう性質を利用して、人間の意識に直接ハッキング(解析・改変)を仕掛けること。」

hIEがどれだけ人間らしい振る舞いをしても、それはAIプログラムによってシミュレートされたものであって、hIEに"こころ"は存在しない。hIEが人間の感情に訴えかける行動を取るのは、"アナログハック"で目的を遂行するために過ぎない。アラトがレイシアの望むがままにオーナー契約を結んだのは、"アナログハック"を受けた結果なのだろうか。「人類未到産物」と呼ばれる超高度化したAIでも、やはり"こころ"は存在しないのか(シンギュラリティは生じないのか)。

・・・と、テーマはとても面白いのだが、アラトが一番惹かれているのが、レイシアの"美しさ"としか読み取れないんだよね。「出会いはその美しさ、その後はレイシアの人間的な部分に触れて」、という流れであれば納得できるのだが、描かれるアラトの心情は「美しいレイシアを手放したくない」という側面が強く、また、レイシアと絆を深めるような決定的なエピソードにも乏しいため、「アラトくん、あんた完全に"アナログハック"されてるよ!」となってしまう。で、そんなアラトがどれだけ主張を繰り広げても、「超絶美少女アンドロイドに狂わされた哀れな少年」としか見えなくなってしまい、物語を追うのが辛い。それ以外にも姿を追いたくなるような魅力的なキャラクターはおらず、読み進める楽しみが見つからない。(良かったのは紫織ちゃんくらいかなぁ・・・。)

少しでもそそられる展開になることを祈って下巻へ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月6日
読了日 : 2022年8月6日
本棚登録日 : 2022年6月26日

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