一冊の書物という宇宙へ身を投じるとき、わたしは底無しの暗い深みへと引きこまれながら、見えない中心から一瞬に永遠へと繰りひろがる渦動を捉える。そう、物語は渦巻きの状態に憧れている。いつまでも語られてそこにあること、永久に同質のエネルギーを持ち続けるような開かれた言葉の群れが実現されることを望んでいる。ゆえに、中心にあるのは「無」であってはならない。中心にあるのは、別の宇宙への入口であり、出口だ。
過去は消え去ってはいない。痕跡がたどれなくとも、すべては実在している。語り直される獲得の夢。存在の陰画としての不在。
『ゲーリケの一角獣』がとても好みで、熱に浮かされるように読んだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ドイツ
- 感想投稿日 : 2020年12月7日
- 読了日 : 2020年12月5日
- 本棚登録日 : 2020年12月7日
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