- きりのなかのサーカス
- ブルーノ・ムナーリ
- フレーベル館 / 2009年9月1日発売
- Amazon.co.jp / 本
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サーカス。
その言葉を聞くだけで、たちまち頭の中に巨大なテントが張られます。ある日忽然と現れ、異様なまでの存在感を放つけれど、何事もなかったかのように去っていくサーカスは夢そのもの。
景色がぼんやり霞み、時間がゆっくり進む霧の中には夢の中へ続く道があるのです。迷ってしまっても心配はいりません。水粒の隙間を縫うようにして響いてくる楽しげで陽気で調子外れの音楽が客席まで私を導いてくれるでしょうから。目がチカチカする原色のスポットライトの下で繰り広げられる一風変わった演目。誰もが心躍らせるサーカスがここにありました。
《2016.04.27》
2020年2月16日
ゆらぐ記憶の底の底で上演される幻燈サーカスは網膜で焦点を結ばず、表面が波打った歪んだガラスを通して見ているような感覚があった。心おどる懐かしさと別の感情を抱いたのは、私がサーカスという言葉を耳にするだけで興奮を覚えていたあの頃に見た舞台の裏側を、今になって覗いてしまったからだと思う。
荒地に忽然とやって来て、跡形もなく去っていくサーカス。
観客のいないテントの中を舞っていたのは掴んでくれるあてのない手、待ち人の歌声。かつての栄光が片隅でうずくまる。スポットライトの下、取り残されたこころが悲しいほどに照らされて。
2017年4月20日
- ムッシュ・ムニエルのサーカス
- 佐々木マキ
- 絵本館 / 2000年10月1日発売
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やぎのムッシュ・ムニエルは手品師ではなく、偉大な魔術師です。何が起きても最後には丸くおさめているので、さすがです。でもちょっぴりドジ。手品と違って魔術には種も仕掛けもありません。
隣の人とおしゃべりをしながらショーを観覧していたら、見所を見逃してしまうかもしれません。いや、しゃべっていなくとも、天井と床を同時に見ることのできる幅広い視野を持っていないと、魔術の全貌を把握することはできないでしょう。
だから〈みなさま、よーく ごらんくださいまし。〉
ありきたりな綱渡りや空中ブランコに飽きてしまった人なら、なおさら。
2016年6月18日
- ラーオ博士のサーカス (ちくま文庫 ふ 6-1)
- チャールズ・G.フィニー
- 筑摩書房 / 1989年9月1日発売
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まだ誰も目にしたことのない神秘のサーカスは、アリゾナ州アバローニ市のセロファンみたいな熱気の幕に映ったイリュージョンではない。ラーオ博士の頭の中に広がるいくつもの観念世界を取り出して曖昧に具現化したのがひとつひとつのテントだ。入場料はたったの10セント。科学で解明しようだなんて夢を潰す行為はお断り。その中に納められているのは奇妙奇天烈摩訶不思議少々猥褻な刺激的要素のコレクション。誇大広告に騙されたつもりで行ってみれば大興奮。
お気に入りは魔女たちの饗宴。
巻末付録の『カタログ』が本編と同じくらいすこぶる面白い。
2016年5月7日