きみが、この本、読んだなら とまどう放課後 編

  • さ・え・ら書房 (2020年3月6日発売)
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感想 : 16
4

「ねえ、この本、読んでみたら」
本の紹介をめぐる、4つのお話のアンソロジー。

◯『赤いコードロン・シムーン』森川茂美
女子が苦手で飛行機が好きな翔(かける)は、隣の席のすみれの机の上に、フランスのシムーン社が1930年代に製造した飛行機、コード・シムーンの模型の写真がのった下敷きを発見したことから、すみれと仲良くなる。すみれに『星の王子さま』をすすめられて読んでみた翔だが、飛行機以外の内容にはさほど興味が持てなくて…。
・『星の王子さま』(岩波文庫)サン=テグジュペリ 作 内藤濯 訳 岩波書店

実を言うと、私は世間の評価ほど『星の王子さま』の良さを理解できていない大人です。でもこのお話を読んでいると、どんな読み方をしたっていいんだなって思えて、ちょっと気が楽になります。
翔は一回目、飛行機の型番が気になって読んで、出てこなかったことにがっかりする。でもその後に、サン=テグジュペリの経歴を調べ、彼が持っていた飛行機や、この話がどのタイミングで描かれたかを理解する。そのことで、二回目は史実とものがたりの違いに着目し、そこから著者が描きたかったものを想像する。三度目にやっと、キツネが王子さまに教えた言葉に目を留め、バラの花に着目して読んでみる。
いろいろな読み方をして、最後にすみれが怒った理由に思い当たり、さらに、自分が言いたかったことをもっときちんと伝えたいと思う翔。飛行機の型式はただの数字じゃないんだよって、翔が想いを伝えられた場面が好きです。
その時の心の持ちようで、その本から感じる思いも違ってくるのだし、自分が着目する箇所も全然違ってくる。でもそれは、どれが正解とかじゃなくて、どんなふうに感じたって別にいいんだよって。そう言ってもらえているようで、うれしい。

◯『たそがれ時の魔法』高田由紀子
図書委員の葉月は、憧れの透也くんと一緒におすすめ本のポスターを作ることになる。葉月のおすすめの『コンビニたそがれ堂』のポスターを、透也が絵、葉月が文字を担当し、作り上げることが出来るが、葉月は透也が転校してしまうと知って…。
・『コンビニたそがれ堂』(ポプラ文庫ピュアフル)村山早紀 著 ポプラ社

『コンビニたそがれ堂』、こないだ最初の方だけ読んで返してしまった。葉月が辛い時期を乗り越えられた本、またきちんと読んでみたい。
引っ込み思案で内気な葉月が、最後に振り絞った勇気に乾杯。

◯『走っていくよ』松本聰美
仲良しの麻衣ちゃんが転校してしまった綾香は、クラスの三人組・大月さんたちに言われて、寄り道をしているという噂の変わり者の転校生・佐川さんを尾行することになって…。
・『ポケットのはらうた』くどうなおこ 詩 ほてはまたかし 画 童話屋
・『また すぐに会えるから』はたちよしこ 詩 大日本図書
・『オーパル ひとりぼっち』オーパル・ウィットリー 原作 ジェイン・ボルダン 編 バーバラ・クーニー 絵 やぎたよしこ 訳 ほるぷ出版

佐川さんが結構変わった子で面白かった。それにしても、紹介する本を詩に設定するのは難しそうだなぁ。くどうなおこさんの『のはらうた』はいいですよね。カマキリリュウジ、超懐かしい。大月さんたち三人組も、そんな悪い子ではなく、優しい世界。「ミツルは風で、リュウジはカマキリで」とか言ったら、「なにそれ、変なやつ」ってなりそうだけど、「風と話するなんて、ちょっと楽しそう」って反応になる三人組は優しい世界。

◯『ぬすまれた時間と金色のパン』工藤純子
サッカーが好きな和弥は、サッカーを休み塾に通い始めた卓に影響を受けて、塾に入り、中学受験を目指すことになる。サッカーの強い中学に入るために勉強をしているはずなのに、気持ちばかり焦る和弥に、同じクラスの春香が無理やり押し付けたのは、『モモ』という本で…。
・『モモ』ミヒャエル・エンデ 作 大島かおり 訳 岩波書店
・『ふたりは いっしょ』アーノルド・ローベル 作 三木卓 訳 文化出版局

「本を閉じるのがさびしい…」
私もはるか昔、『モモ』を読んでいた時に思っていた気がする。いつまでもいつまでも読んでいたいと思わせる本。そんな本に出会えると本当に幸せだ。
しかし『モモ』の金色のパン、全然覚えていないので、こちらもまた読み返さないとなぁ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小学校高学年
感想投稿日 : 2021年1月17日
読了日 : 2021年1月17日
本棚登録日 : 2021年1月17日

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