クジラ・イルカを食べる社会について、それが絶滅させるほど急進的なものでないならば、文化だからと許容できる。イヌ・ネコ・サルとなると、出来るだけ苦しまないようにしてやってくれと注文をつけたくなる。チンパンジー・ゴリラ・オランウータンだとさらに悩むが、やはり許すだろう。だが、ヒトなら。北京原人なら、ネアンデルタール人なら、アウストラロピテクスなら、どうだろう。チンパンジーが原始人類と交雑していた時代があったとしたら、どこが境目となるだろうか。
本書はチンパンジーとヒトの違いから人類の起源を探る一冊。血・脳・からだの3章に分かれ、遺伝子の違いから感染する病気の違い、会話能力の探求、文化の存在証明、ヒトへの進化の諸説、オスとメスの性戦略、食生活、寿命、保護環境などなど数多の研究結果を紹介する。未だ明らかになっていない事実も多く、結論が得られる解答は多くないが、その実験内容や論説の経緯は素人にもわかりやすく存分に楽しめる。ただ、総じると『<a href="http://mediamarker.net/u/akasen/?asin=4152089997
" target="_blank">見る</a>』のように雑多な研究結果の総まとめ的な一冊となっており、邦題の問いを解き明かすような答がないことが、『<a href="http://mediamarker.net/u/akasen/?asin=4150502609" target="_blank">フィンチの嘴</a>』や『<a href="http://mediamarker.net/u/akasen/?asin=4167651750" target="_blank">ハチはなぜ大量死したのか</a>』などの文庫化された科学本の名著たちとの違いだろうか。(原題はAlmost Chimpanzee)
この本を読むことで、あらゆる方向からチンパンジーとヒトとの類似性と相違点を認識できることは間違いない。だが、それを知ったとしてどうするか?その先は読者に委ねられている。
- 感想投稿日 : 2014年4月23日
- 読了日 : 2014年4月23日
- 本棚登録日 : 2014年4月23日
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