補給戦: 何が勝敗を決定するのか (中公文庫 B 14-10 BIBLIO S)

  • 中央公論新社 (2006年5月25日発売)
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具体的な数字と計算の根拠を用い、過去の戦争で補給が如何に失敗してきたのかを分析する戦国史観。
砲の登場により河川を利用した運搬が行われても、食料の現地調達はそれ以前と変わらなかった16〜17世紀の略奪戦争。初めて正規の補給部隊を設立し、略奪からの一歩を踏み出したが、砲戦の激化による必要重量及び兵員の増加と、困難な戦地の状況により撤退せざるをえなかった1800年以降のナポレオン戦争。期待された鉄道の運用がことごとく失敗した1870年のモルトケ戦略。技術革新が軍備の拡大においつかず、トラックを用いても全く補給が追いつかなかった1914年のドイツ陸軍。その後全く成長せず、兵站において何一つ成功させることができなかった1941年のバルバロッサ作戦。天才的な戦術家ロンメルと十分な兵数と物資があっても、その補給線の距離によって敗退した1942年の北アフリカ派遣。大量の物資と綿密な計画があったが、その緻密さゆえ実行できず、各軍が計画を無視することで勝利に至った1944年の連合国軍。
歴史は失敗の積み重ねとはいえ、こうも英雄の活躍も作戦の妙味も戦場のドラマもないと、兵站術に人気が出ないのも頷ける。失敗の理由にしても誰かがやらかした物語があるわけではなく、交通状況、経済状況、荷役状況の計算としての無理を延々と聞かされるので、読み進めるのに苦労する。
これはいっちょかみで楽しみのために読むものではなく、詳細な数値を得るための研究書的なもの。向いてる人にはこの上なく役立つのだろうが、素人にはオススメできない一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年10月27日
読了日 : 2014年10月27日
本棚登録日 : 2014年10月27日

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