『ヴェニスの商人』を資本主義的観点から読み解くエッセイ他数篇。
1980年代の視点から書かれた経済論を解説なく読み解くのは素人には難易度が高く、
フランソワ・ケネーの『経済表』が高校生の常識と言い放たれる程度に優しくもない。
あちこちつまみ食いしている程度の自分にとっては表題以外の論を正しく読み解けたとは言い難いため、評価は出来ない。
なんせ『需給曲線』や『神の見えざる手』なんて現実世界で成り立たないだろうと常々思っていたことが、
本書を読んでようやく、経済学界においては当然そんな議論はし尽くされているということを認識した程度であるのだから。
それでも肝心の主題のエッセイだけは全く初心者にも読み解けるものであり、
語り尽くされた物語の新たな一面を楽しめるのだが、やはり疑問はある。
資本主義とは独立した共同体同士の差異の交換であることは理解できるし、その差異から利潤が生まれることも納得できるが、差異は利潤によって死ぬとされるのには頷けない。
もちろん均一化が進むのは間違いないだろうが、資源はもとより、歴史や気候の違いから生じる文化の差異は、
例え経済力が均衡したとしても覆し難いもののように思えるし、
何より資本主義のもう一つの側面、"分業"を無視しているかのようにさえ感じる。
と、門外漢の自分に持てる感想はこの程度だ。
『現在』というには古く、『過去』というには新しすぎる時代の一分野の背景は、
ひょっとすると100年、いや1000年前の時代背景よりも捉え難くさえ思えるが、
それを解き明かすということには、別の時代を生きるような楽しさが待っているのかも知れない。
- 感想投稿日 : 2017年10月31日
- 読了日 : 2017年10月31日
- 本棚登録日 : 2017年10月31日
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