圧倒的な完結編。最終章あたりは、もはやこの物語の最後を飾るのに、これ以上の言葉の選別と構成はありえないほどの、詩的とすら呼びうる雰囲気と水準を有する。日本がもったエンターテイメント、娯楽、SF小説の最高峰のひとつ。欧米の古典小説の多くすら凌駕する内容であろう。
老若男女万人にオススメできる。田中芳樹の最高傑作のみならず、日本のエンターテイメント創作史の頂点が1980年代だったのでは、とすら思わせる内容。他ジャンルたるビデオゲームやアニメ作品なども含めて、なお、である。
田中芳樹著のこの作品はエンターテインメントを突き詰めることでその枠を突き破り、15世紀に渡る人類の罪をも描ききった。最後はルドルフ・フォン・ゴールデンバウムさえ、あるいはこの世界が我々の史実を基礎に置くことも考慮すると、とアドルフ・ヒトラーとナチ・ドイツの所業さえもその罪を許され、浄化されるかの如き荘厳な終幕である。その意味で、この作品は、これに言及する人は少ないが、(肯定的な意味での)宗教的色彩を最後の最後で帯びるに至ったとすら言える。
…最後に、多くの人が挙げる、本篇最後の例の印象深い言葉よりも個人的に読了から20年を経ても胸の内奥に貫き通されて抜けはしない、それより10段落ほど前の言葉を引用して簡易的なこのレビューを終えたいと思う。
「それは人類全体の歴史を貫流する、手のとどきえぬものへの憧憬を、一身にあらわしたのではないだろうか」
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読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
SF小説
- 感想投稿日 : 2011年9月18日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2010年11月11日
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