こんなにも禍々しく、これほど強烈な悪意を発散する怖ろしい太古の闇に、なぜ誰も気づかないのか・・・。繁栄と平和を謳歌するコンスル帝国の皇帝のもとに、ある日献上された幸運のお守り「暗樹」。だが、それは次第に帝国の中枢を蝕みはじめる。コンスル帝国お抱えの大地の魔道師でありながら、自らのうちに闇をもたぬ稀有な存在レイサンダー。大切な少女の悲惨な死を防げず、おのれの無力さと喪失感にうちのめされている、書物の魔道師キアルス。若きふたりの魔道師の、そして四百年の昔、すべてを賭して闇と戦ったひとりの青年の運命が、時を超えて交錯する。人々の心に潜み棲み、破滅に導く太古の闇を退けることはかなうのか?
『夜の写本師』のときも設定の巧みさと独特な言葉の使い方に感嘆しましたが、同じ世界を舞台とした今作も良かった。闇と向かい合い自分なりに闘っていく魔道師たちの姿に、時代や風潮は違っても私たちが何と対面しなければならないのか、本当に恐ろしいものは過信した自分自身であると気づかされる。キアルスの過去がこんなものだったとは・・・ギデスディンの魔法はここから生まれたんですね。最後は怒涛の流れだったので、想像力が乏しいのか、いまいち映像が脳内で再現できない部分もあった。けど同時にこれがこの人の書く文章の魅力でもあるんだろうなぁ。カーランとの幸せな日々がもうちょっと書いてあればなお良かった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
国内小説
- 感想投稿日 : 2013年2月21日
- 読了日 : 2013年2月21日
- 本棚登録日 : 2013年2月21日
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