たとえ、世界に背いても

著者 :
  • 講談社 (2015年5月13日発売)
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本棚登録 : 70
感想 : 18
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浅井由紀子博士は紫斑性筋硬化症候群という難病の治療用ワクチンを開発したことにより、ノーベル医学・生理学を受賞した。物語は、その授賞式の晩餐会での彼女の長く恐ろしいスピーチから始まる。
彼女のひとり息子は、生まれてから約1年後にこの病気にかかった。紫斑性という名前から分かる通り、発病すると体に紫色の斑点が出る。それは10年から15年かけて全身に広がるとともに、やがて筋力が硬化し死に至る。
研究者である彼女は、息子のために母親として研究に研究を重ね、その治療方法について必死になって調べた。しかしその努力も意味のないものになってしまう。高校一年生になった彼女の息子は自殺してしまったからだ。彼女はその原因がいじめであるということをつきとめた。
話はそれだけでは終わらない。
彼女はこのウィルスを培養して感染力が強力化したものを作り出し、そして飲料に混ぜることによって、既に世界中にばらまいていた。この晩餐会に使用された飲み物にも、持参したウィルスを混入させていた。
この世の中で、治療用のワクチンを持っているのは彼女ただひとり。
浅井由紀子博士は生成方法を教える条件として、下記の2つを提示した。
1、当時のクラスメイト全員から、何があったのか真実を聞き出すこと。
2、クラスメイト23人全員をできるだけ残酷な方法で殺害し、亡骸を持ってくること。

そして話はこの事件に関わった当事者たちの証言で進んでいく。そして誰もが「まさかあんなことになるなんて」とか「あんな事態が自分を待ち受けていたなんて」って言うから、ますます先が気になって読むのを止められない。世界中の人々の命と、イジメの主犯格もしくは協力者または加担者そして傍観者たち23人の命の重さは地球レベルからみれば、天秤にかけるまでもない。


この本のタイトル『たとえ、世界に背いても』という言葉は、いったい誰を表す誰による言葉なのか、そしてこの事件を起こした浅井由紀子博士の本当の目的とはなんだったのか。
全体の9割方が読みやすく進行していくが、ラストは非常に読みにくいというか理解し難い人もいるかもしれない。結局よく分からないと思うかもしれない。わたしもちゃんとは理解できなかった。
天才の考えることは、凡人のそれとは根本的に違うということなのだろう。






読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年1月15日
読了日 : 2021年1月14日
本棚登録日 : 2020年4月18日

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