人生初佐藤友哉は『子供たち怒る怒る怒る』。
短編集ながら(だから?)、それはそれは衝撃でありました。
主に、子供たちが怒ります。
時に無言で。時に暴力的に。時に希望を信じて。
初読時は「子供=『弱者』のメタファー」なのかな~なんて穿った見方をしていましたが、ブクログ登録に際して再読してみると、あれ?違うかも?と。
弱くて無力で大人の庇護なしには生きていけなくて、しかも世の中には必ずしも「善い大人」ばかりではなくて、不当な差別や暴力や理不尽が蔓延していて、そんな世界に疲れ果てて諦め尽くしてただただ息をひそめるしかない「子供」。
そうやって死んだ自我を引きずるようにして生きている子供たちが、ある時怒りを爆発させるわけですよ。
ただ、そのブチ切れ方が大人とは異質。大人だって不当に扱われれば怒るけど、本書の「子供たち」が溜め込んで噴出させる「怒り」とは違うもののような気がします。
大人が怒りを露わにするタイミングって、ある程度自分でコントロールしてたりするじゃないですか。まだ怒る所じゃないな、とか。ここでちょっと仄めかしておかないとナメられるな、とか。ある意味で外交手段みたいな部分もある。
そんなスレた大人から子供の社会を見たら、「どうしてこんな事で怒るのか?」「なぜここで怒らない?」って局面も多々あるんですが、肉体的社会的に抵抗する力が無かったり、子供は子供でその場のパワーバランスを必死に見据えていたりするんですよね。
子供は子供の論理で動いている。大人は大人の論理で動いている。
まあ当然っちゃ当然ですが。
その辺りが生々しく描かれているので、「子供たち」の「怒る怒る怒る」に共感できるかと言われれば微妙。
じゃあ子供の世界をリアルに再現しているのかと云えば、それも微妙。だって大人が想像した子供の世界ですもんね。
でもそれがすっごい面白かった。佐藤友哉のそこが好き。
『リカちゃん人間』ラストシーンは、私の中で「読むと煙草が吸いたくなる名場面」に殿堂入りしております。
- 感想投稿日 : 2013年2月10日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2013年2月10日
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