大好きな林明子さんが描くかわいらしい仔山羊に惹かれて手に取りました『10までかぞえられるこやぎ』。
遠くに美しい山々を望む原っぱで、無邪気に数をかぞえまくる仔山羊のお話……と云えばまあそうなんですけど、読んでみて衝撃を受けたのは、登場する他の家畜動物たちが仔山羊に「かぞえられた」事に大激怒するところ。
納得というか、理屈じゃなく「わかるー!!!」ってなってしまいました。
例えば、相手の名前を知る(呼ぶ)ことで相手を支配する、みたいなお話があるじゃないですか。『西遊記』の瓢箪とか、デスノートとか。名前、つまり言葉が魂の本質に直結する、所謂「言霊」思想だと思うんですけど、「数をかぞえる」行為にもそれに通ずるものがある気がするんですね。
数える事で物事を把握する、掌握するイメージっていうんですかね。これも一種の「呪」なのかなあって(こんなこと自分で考え付けるはずがないので、恐らく以前何かで読んだんだと思います。『陰陽師』とかかなあ?)。
だから、初めの仔牛には「きみもかぞえてあげようか」「じゃ、かぞえるよ」と断りを入れるものの、それ以降は怒り狂った牛や馬に追いかけられながらも決して数えるのをやめない仔山羊に「うわっ!」ってなったし、追う側が感じている数えられたことへの不安や焦りや怒りに対して、妙に共感してしまったのでした。
乗り込んだ舟が転覆するかもしれない、という大ピンチから脱することができたのも、仔山羊が数をかぞえたから(かぞえただけ)。
やっぱり「数をかぞえる」ことには何かあるな……と、改めて思った次第です。
- 感想投稿日 : 2017年10月10日
- 読了日 : 2017年10月
- 本棚登録日 : 2017年10月10日
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