正体 (光文社文庫 そ 4-1)

著者 :
  • 光文社 (2022年1月12日発売)
4.35
  • (402)
  • (315)
  • (87)
  • (9)
  • (4)
本棚登録 : 4502
感想 : 298
4

 染井為人さん、初読みでした。600p超の分量でしたが、濃密な物語にグイグイ引き込まれ、続きが気になってページをめくる手が止まりませんでした。有意義な読書時間を過ごすことができました。

 一家三人殺害事件の犯人として拘置所に収容中の少年死刑囚が脱獄! この衝撃的な事案から約1年と4ヶ月間、逃亡中の少年の日常を他者の目から見て綴った物語、という構成となっています。

 鏑木慶一‥彼と出会う人みんなが好感を抱き、読み手も疑問を抱きます。彼は本当に罪を犯したのか、冤罪ではないのかと‥。
 少年の正体は聖人か、怪物か。一体この少年は何者なのか‥。一番知りたい鏑木慶一の心情が描かれないので、想像がふくらみます。その時々の小さなコミュニティ(職場)に入り込み、誰にも優しく接する反面、とらえどころなのない、近寄りがたく、ミステリアスな雰囲気を醸し出します。この辺の各登場人物・状況設定・関係性の描写が素晴らしく、不穏さともどかしさが助長され、読み手を更に惹きつけていきます。

 ネタバレするわけにはいきませんが、終末は何とも切なく、やるせない気持ちになります。
 本書には、少年犯罪、冤罪、死刑制度など、多くの議論対象が存在すると思います。ただ、当事者でない私たちにとって、残念ながら他人事になってしまうのは、避けられない事実でしょうか‥。
 それでも、ミステリーとして、エンタメ小説として、とても大きな価値ある一冊に違いありません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月9日
読了日 : 2023年6月9日
本棚登録日 : 2023年6月9日

みんなの感想をみる

コメント 2件

あゆみりんさんのコメント
2023/06/09

本と珈琲さん、こんばんは。
レビューを読み、少年の正体が気になって仕方がありません。
染井さん、面白いらしいですし、図書館本が落ち着いたら読みたいです。

NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/06/09

あゆみりんさん、こんばんは♪
コメントありがとうございます。
他の方のレビューを読むと、賛否がいろいろとあるようですが、私は肯定的に受け止めました。
ぜひ読んでいただき、少年の「正体」をご確認を!

ツイートする