染井為人さん、初読みでした。600p超の分量でしたが、濃密な物語にグイグイ引き込まれ、続きが気になってページをめくる手が止まりませんでした。有意義な読書時間を過ごすことができました。
一家三人殺害事件の犯人として拘置所に収容中の少年死刑囚が脱獄! この衝撃的な事案から約1年と4ヶ月間、逃亡中の少年の日常を他者の目から見て綴った物語、という構成となっています。
鏑木慶一‥彼と出会う人みんなが好感を抱き、読み手も疑問を抱きます。彼は本当に罪を犯したのか、冤罪ではないのかと‥。
少年の正体は聖人か、怪物か。一体この少年は何者なのか‥。一番知りたい鏑木慶一の心情が描かれないので、想像がふくらみます。その時々の小さなコミュニティ(職場)に入り込み、誰にも優しく接する反面、とらえどころなのない、近寄りがたく、ミステリアスな雰囲気を醸し出します。この辺の各登場人物・状況設定・関係性の描写が素晴らしく、不穏さともどかしさが助長され、読み手を更に惹きつけていきます。
ネタバレするわけにはいきませんが、終末は何とも切なく、やるせない気持ちになります。
本書には、少年犯罪、冤罪、死刑制度など、多くの議論対象が存在すると思います。ただ、当事者でない私たちにとって、残念ながら他人事になってしまうのは、避けられない事実でしょうか‥。
それでも、ミステリーとして、エンタメ小説として、とても大きな価値ある一冊に違いありません。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年6月9日
- 読了日 : 2023年6月9日
- 本棚登録日 : 2023年6月9日
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コメント 2件
あゆみりんさんのコメント
2023/06/09
NO Book & Coffee NO LIFEさんのコメント
2023/06/09