本書は、女性への差別や不平等を解消し、男女同権・女性解放を主張する、いわゆるフェミニズムがテーマになっています。
韓国が抱える社会の女性差別問題がよくわかったと言うよりは、実際に日本でも多くの同様の事実があった、いや今もあることを思い起こし、対岸の火事ではないと、その重大さを突き付けられます。
キム・ジヨン氏(韓国で82年生まれの最も多い女性名)、33歳。彼女が精神を病んだ描写から物語は始まります。そこから時計が巻き戻され、彼女の誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児までの半生が克明に回顧されますが、社会の中に当たり前のように潜む女性の困難や差別が淡々と描かれます。
こうした社会構造・抑圧が、韓国の自国女性のみならず、日本も含め今を生きる多くの女性たちの共感を生み、当事者意識をもたせたのでしょう。男性こそ読むべき一冊と言えるでしょう。
ありふれた名前、表紙イラストの顔のない女性、普通の家庭環境など、ごく普通の女性を主人公に設定したことも女性の支持を集め、社会の潮目が変わるきっかけのひとつになったのでは、と思えます。
直近に読んだ『ゴリラ裁判の日』で「人権」について考えさせられ、本書では「女性の権利」を見つめ直す契機となりました。
当たり前がまかり通っている社会構造・通念の危うさをクローズアップし、多くの人が声を上げる機会が増え、真っ当に議論が進んでいく社会になることを、ささやかに痛切に祈念しました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年6月1日
- 読了日 : 2023年6月1日
- 本棚登録日 : 2023年6月1日
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