視覚がないということを、他の感覚を使って補う。手が読む、耳が眺める。器官が何をするかを決めるということじゃなく、何かをするために器官を利用するということ。
与えられたマイナスの状況をプラスに転化する価値転倒の力。
足りていないからこそ、自立するための依存できるものを探して、増やす。
そうやって、見えないことから始まっていく世界は、いつの間にか、見えることを越えていけるのかもしれない。
見るということ、見えてしまうということの手に余るほどの強さ。見えてしまう世界が、簡単に手に入る世界が、捉えて、引き留めて、それ以上の広がりを許さない。
見えるものだけが正解になってしまう。見えるものだけが全てのように片づけてしまう。
世界を規定する。
その途端に、表と裏が、内と外が、正解と不正解が、対照のものが出来上がってしまう。
情報の欠如を、だからこそ生まれる意味によってひっくり返す。自分の置かれた状況をちょっと離れたところから眺めて、正反対の意味を与えてしまう。
障害者とされる人たちが、見ている世界。そんな世界を見ている人たちの力を借りることで僕たちも、束縛を解かれて、もっと違う世界を覗くことができるようになれるのかもしれない。
いま見えていない世界を見ようとすること、想像しようとすること。そんな意識をまた思い出した。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年4月18日
- 読了日 : 2016年8月7日
- 本棚登録日 : 2021年4月18日
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