欲望の資本主義

  • 東洋経済新報社 (2017年3月24日発売)
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感想 : 48

2019年2冊目。

年明け早々、『欲望の資本主義』シリーズのテレビ番組を6時間見通してしまった。理論的な経済学には苦手意識があったにも関わらず、これにはかなり大きな刺激を受けた。

経済の学説は単なる教養ではなく、政策的なイデオロギーになる。時代背景やテクノロジーが変わり、その説が唱えられた時代と前提がずれていてもなお、過去の理論が説得力を持たせるための道具にもなり得る。にわか知識で「アダム・スミスが言っている」では済まないと感じた。

一番強く思ったのは、テクノロジーから目をそらしてはいけない、ということだった。「資本主義 or 社会主義」という当たり前に考えてきた二項対立でさえ、テクノロジーの進化によって新しい概念が生まれる可能性すらあると感じる。テクノロジーには、おそらく社会の前提すら覆す力がある。スコット・スタンフォード氏が、AIによる変化はこれまでの変化とは一線を画し、「種の進化」レベルの話だと語った言葉は、単なるセンセーショナルな例えだと思ってはいけない気がする。

行き先もわからず今の流れに身を委ねることへの恐怖心を持った。債務を重ねてでも突き進む成長至上主義への危機感も急激に強まった。プラットフォーム企業の台頭やイノベーションの価値に対しても、これまでとは違う慎重な見方が芽生えた。2019年に読みたい本のジャンルが、この本によってだいぶ変わったと思う。足元のミクロでの動きも大事にしつつ、大きな流れをもう少しちゃんとつかみたい。

番組でもそうだったけど、セドラチェク氏の語りは非常に興味深い。研究分野の幅広さからも、例えが秀逸。チェコで共産主義時代も味わっているというバックグラウンドも貴重だし、この人の本はすべて読もうと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済
感想投稿日 : 2019年1月4日
読了日 : 2019年1月4日
本棚登録日 : 2018年1月3日

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