一〇五度

著者 :
  • あすなろ書房 (2017年10月27日発売)
3.68
  • (17)
  • (38)
  • (39)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 397
感想 : 49
4

「イス」職人の孫に生まれた主人公の真は、祖父の血を引き、イスマニアに育ちます。
一方で、同じようにその血を引く父親は「安定志向」を絵に描いたような「わからずや」で、成績を上げ、上位の大学へ進学し、安定した収入のある会社へと就職するよう、真へプレッシャーをかけ続けます。
父親への反発と、自分のやりたいことを突き詰めるために「イス」のデザインコンペティションへと参加することを決意する真。

親の過度な期待を背負い、苦しみながら生きている真の姿には胸が痛みましたし、ラストのシーンでも一定の成果を上げながらも父親の評価を覆すことができないなど、ある意味で非常に「現実的」な作品であると思います。

この作品の中で繰り返し語られるテーマの一つは、「好きなことを仕事にすることはしんどい」ということ。趣味として続けるのではなく、他者からの評価(収入を含めて)がさけられない「職業」として、自分の想像力や創造力だけで勝負していく生き方には相応の覚悟が必要であるということが伝わります。
決して、平坦ではなく、また壁の多い道ではありますが、「行くべくして行く道」であるならば、どのような困難にもめげずに立ち向かってゆく、その心意気が欲しいと思います。

中学校の2018年度の読書感想文コンクール課題図書のひとつですが、「後味があまりよくない(ハッピーエンドではない)」あたり、少しハードルが高いかもしれません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 仕事
感想投稿日 : 2018年5月30日
読了日 : 2018年5月30日
本棚登録日 : 2018年5月30日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする