孤独の価値 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎 (2014年11月27日発売)
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どうやら著者は、「孤独」というものを「チームプレーができないこと」「近代資本主義が要求する共同幻想に対し抵抗感を感じながらも、これに否応なく流されていること」だと定義しているようだ。そしてこれらに対置する形で「個人だけで目的を探求することの素晴らしさ」つまり個人プレーを挙げその素晴らしさを説く。

僭越ながら僕の考えでは全く違う。個人プレーである程度自己実現できている人はそもそも孤独感など抱いてはいまい。現代人の抱える孤独とは、「チームプレーも個人プレーも両方できなかった」人の抱える絶望感だ。共同幻想か個人的な探求か、どちらかは果たせるだろうと生きながらも、二つとも指の間からこぼれ落ちていった者の遣る瀬無さだ。「近代資本主義が要求する共同幻想」の虚構性になどとうの昔に気づきつつも、これに代わる価値観をいまだ見出せないことの閉塞感なのだ。このことが、個人としてすでに一定の成功を収めているとみえる著者に根本的に理解できていないのだと思う。

連帯感をやたらと鼓舞するマスコミへの反感は理解できるが、ではなぜマスコミの行動様式がそのようなものであるのかについてはほとんど考察されていない。儲かるから?ではなぜ連帯感を謳うとマスコミは儲かるのか? 単純に「孤独」を「個人プレー」に矮小化してしまっているため、本質的な問題に全く答えられず薄っぺらな内容になってしまっている。

あと、全く本筋からは外れるが「オーバ 」「マイナ」のように、すでに日本語化している外来語が、わざわざ本来の発音(と著者が考えるもの)に置き換えて表記されているのがいちいち引っかかって読みにくい。「マイナ」なんて一瞬マイナスの意味かと思った。表記に整合性を取るなら「声でそれをカバーする」というくだりも「カバする」と表記すべきだと思うが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年2月4日
読了日 : 2017年2月4日
本棚登録日 : 2017年1月6日

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