20世紀英国の作家(但し、アメリカ出身)、2000年に病没した
ジョン・スラデックの奇天烈な短掌編集、全23編。
SFありミステリありホラーありと盛りだくさん。
ギャグ漫画のようなナンセンスなストーリーに呆れていると、
不意にシリアスな話が現れるので油断禁物。
心理描写に重点を置かず、アイディア勝負の力業が多いため、
好き嫌いが分かれそう。
個人的に、笑いの中にもペーソスが感じられる物語が好きなので、
面白かったがドップリ浸れたとは言い難い(笑)……すまぬ。
以下、特に印象的な作品について。
■高速道路(The Interstate)
単身、優雅なバカンスを楽しもうと、
長距離高速バスでリゾートを目指す会社員の男。
指定された巨大チェーンのレストランで
食事休憩を取ることを繰り返しながら、
目的地に向かうはずが……何かがおかしい。
食欲旺盛なのは結構だが、
これでは太ってしまいそう(笑)。
■血とショウガパン(Blood and Gingerbread)
本当は恐ろしいグリム童話=「ヘンゼルとグレーテル」異聞。
粗暴な父にも、か弱い母にも、強欲な継母にも、
優しい魔女にも従わない、
一枚も二枚も上手(うわて)で残酷な双子の兄妹。
■小熊座(Ursa Minor)
仕事の打ち上げで酒を飲んだ後、リチャード・マトロックは
いつの間にかクリスマスプレゼントを携えていた。
それはアンティークなテディベアで、
首輪のプレートには「ダニエル、7」と記されていた。
幼い息子ジミーはそれをとても気に入ったが、
次第に奇妙な出来事が……。
家の中で何か不都合が生じたとき、「くまたん」が
勝手に動き回っていたずらしたことにしよう、
と考えたくなる気持ちは、よくわかる(笑)。
■蒸気駆動の少年(The Steam-Driven Boy)
アーニー・バーンズ大統領の専横に危機感を覚えた
タイムパトロール隊は、
彼の少年時代の姿を模(かたど)ったダミーを
1937年に送り込んで本物とすり替える作戦を取った。
当時の人々に万一分解されたとしても、
彼らに理解可能な仕組みで出来た蒸気駆動式アンドロイドを……。
カモフラージュを重ねた挙げ句、
誰がどれで何がどうなっているのか、グチャグチャに。
■おとんまたち全員集合!(Calling All Gumdrops!)
タイトルの「おとんま」は「お頓馬」。
grownup:大人→gumdrop:(子供が好む)グミ
というダジャレの原題を巧みに邦訳。
最近の子供たちの言動は理解に苦しむと嘆く大人の話……
かと思いきや、どうやらおかしいのは彼らの側で。
就職し、結婚し、親の立場となっても、
子供の頃のまま遊び呆けたい人たち。
カットされたジーンズから剥き出しになった膝頭の瘡蓋を気にして、
いつも弄っているという主人公の描写が秀逸。
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- 感想投稿日 : 2019年5月15日
- 読了日 : 2019年5月15日
- 本棚登録日 : 2018年7月28日
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