高齢社会における一服の清涼剤。
英国のとある広大で美しい景色を擁する引退者用高級施設クーパーズチェイスで繰り広げられる素人(なのか?)探偵クラブを中心とした相次ぐ殺人事件と身元不詳白骨の謎を巡る、古き良きダニットミステリ。
詳細な経歴は語られないがかつて諜報機関のような組織に属していたと思われるエリザベスと、地味ながらもその地味さを武器にしれっと流れを自分の側に手繰り寄せるすべを持つ元看護士のジョイスを中心に、事件解決に向けシニア達が若手警察官達に負けず劣らず活躍する様は元気が出るし、すがすがしい。
ただ、逆に自らの過ちを受け入れる際に次回のない幕引きを決断する姿は特有のもの悲しさが漂う。
しかしそれすらも舞台設定故の余韻。
この手のミステリの解決編は決して全てを読み切るのは難しく、後出しじゃんけん感があるもので本書もご多分には漏れないのだが、その過程の喜劇を楽しむものと思えば気にならない。
アンソニー・ホロヴッツといい、このリチャード・オスマンといい、まさに喜劇的な英国ミステリ(あとがきからの表現を拝借)に現代的な味付けを施し見事なまでに復権させてくれている。
こういう作品達を読ませてもらうとどうしたって原点回帰したくなるが、それはまた別のレビューで。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外ミステリ
- 感想投稿日 : 2021年11月27日
- 読了日 : 2021年11月18日
- 本棚登録日 : 2021年11月27日
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