亥子ころころ

著者 :
  • 講談社 (2019年6月26日発売)
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「まるまるの毬」の続編。
〈南星屋〉は店主で菓子職人の治兵衛、娘のお永、孫のお君の家族三人で営む小さな菓子屋。看板菓子はなく、治兵衛がこれまで諸国を巡って覚えた菓子をアレンジして日替わりで二品出すのが売り。

前作では治兵衛の出自を巡って様々な事件や窮地が描かれたが、それが一段落した今回は雲平という菓子職人が加わり、失踪した彼の修業仲間で弟分の亥之吉の行方や失踪の理由を追いかける話を軸に進んでいく。

発端は治兵衛の腕の怪我。左手を酷く捻り、利き手ではないとはいえ力仕事が多い菓子作りに支障が出てしまった。
そんな折に行き倒れの状態で転がり込んだ雲平が菓子職人だと知り臨時の助っ人として手伝ってもらうことになったのだが、雲平は職人としても人としても予想以上に治兵衛一家と馴染んでいく。

雲平は年齢的には治兵衛の娘・お永の同年代のようで、早速常連客たちは雲平をお永と添わせ〈南星屋〉の跡取りにするつもりかと噂する。
お永の娘・お君も後押しする気持ち満々だ。雲平が〈南星屋〉を継ぐにしろ出て行くにしろ一緒になって欲しいとまで治兵衛に言っている。
治兵衛はと言えば雲平と菓子作りをするのが楽しくて仕方ないが、いずれは出て行くものと諦めている。
肝心の雲平はと言えば、亥之吉の行方を探すことが最優先で色恋の方はさっぱりという感じ。
そしてお永の元夫・修蔵は雲平という新たな男の登場に焦っている。
お永は本当に雲平を想っているのか、それとも周囲の勝手な勘繰りなのかは分からない。
この三角関係の行方にも注目だ。

そして亥之吉探しについては武家が絡んでいる。旗本の隠居に気に入られた亥之吉が隠居の死の直後に失踪しているのが意味深だ。
しかし真相が明かされれば何とも切ない。本来茶の湯や道具は人の心を癒すものだと思うが何事も行き過ぎは良くない。

治兵衛の弟で僧侶の五郎は今回も頼もしい。亥之吉探しにも一役買っているし、治兵衛一家の複雑な事情にもグイグイ入っていく。

結果的には丸く収まったようで、波乱の予感も。修蔵にとってはまだ気が揉めそう。更なる続編はあるだろうか。

※「まるまるの毬」レビュー
https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4062189909

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説 ドラマ
感想投稿日 : 2021年9月17日
読了日 : 2021年9月17日
本棚登録日 : 2021年9月17日

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