中途半端な密室 (光文社文庫 ひ 12-6)

著者 :
  • 光文社 (2012年2月14日発売)
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感想 : 144
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デビュー作である『中途半端な密室』を含め、計五編の初期短編集。

ミステリーとしての面白さをどこに求めるかは人それぞれだと思うが、「そんなバカな」と「なるほど」とのパランスを上手く取った作品集だと思う。
安楽椅子探偵物になるので、これが間違いなく真実かどうかは分からないものもあるが、一応の納得ができる。
また東川さんらしい軽妙でトボけた会話も楽しめる。
二話目以降の敏ちゃんミキオコンビシリーズは何故岡山弁?と思ったら、東川さんは大学時代を岡山で過ごされたようで、その影響か。岡山弁の柔らかさも軽妙さを後押ししていて良い。

『中途半端な密室』
四方を金網で囲まれ、出入り口は一箇所しかない一面のみのテニスコートの真ん中で見つかった男性の刺殺体。
なぜ犯人はそんな面倒な仕掛けをしたのか。
どういう状況でそうなるのか、その様子がなかなか面白い。

『南の島の殺人』
民家の庭のパラソルの下、全裸の男性の撲殺体が見つかる。
何故犯人はわざわざ被害者の服を脱がせたのか。
南の島でバカンスを過ごしている時に事件に巻き込まれた友人が、わざわざ手紙で敏ちゃんに知らせてきたということが肝。

『竹と死体と』
古新聞に載っていた「地上十七メートルに伸びた竹の上部で見つかった老婆の首吊り死体」という事件の真相。
竹なんだから首を吊ったあとに伸びたのでは?というところまでは思いつくものの、その更に上を行く。

『十年の密室・十分の消失』
五編の中では一番長い。
十年前に起きた、密室状態の離れで見つかった首吊り死体。その離れを十年振りに訪れてみると、わずか十分の間にその離れが消えてしまった。
『南の島の殺人』の友人が再び遭遇した事件だが、この友人の能天気さと対照的な事件の結末が意外。

『有馬記念の冒険』
有馬記念レースと同時に起きた強盗事件。容疑者は事件発生時刻に離れた場所で隣人に顔を見られていてアリバイがある。
なんかこういうアリバイトリックって久しぶりに読んだ気がする。初出は2003年。当時はこういうの、最新だったんだなぁ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー・名探偵
感想投稿日 : 2020年7月13日
読了日 : 2020年7月13日
本棚登録日 : 2020年7月13日

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