上杉謙信、織田信光、浅井長政、柴田勝家、足利義昭、蒲生氏郷、織田秀信、土田御前、8人それぞれの視点から見た織田信長という男。信長という偉大な男に関わったために変わった人生。
ここで描かれる信長像はこれまで散々描かれていたものと大差なくさして新鮮さはないが、これまであまり描かれることのない蒲生氏郷や織田秀信の視点は面白かった。
特に信長の孫である秀信のその後については恥ずかしながら知らなかったので興味深かった。
あまりに偉大故な祖父故にそこに上り詰めようなどという野心など抱くことなく、己に与えられた分を全うすることだけを考えていた秀信が最後に選んだ道がこんな結末になってしまうとは。
またこれまで悲劇の女性として描かれていたお市の方が、浅井長政の章ではしたたかな織田の女として描かれているのも新鮮だった。
浅井長政もここに描かれているような優柔不断振りであれば夫としては全く魅力的ではないし、政略結婚の枠を超えて夫に最後まで添い遂げたいなど思わなかったに違いない。
こういうお市の方なら、彼女から柴田勝家はどう見えたのか、またお市の方から信長はどう見えたのか、それも読んでみたかったように思う。
更にはその柴田勝家が信長の恐怖政治に追い立てられるように身も心も翻弄され疲れ果てていく様子は面白かった。
刻々と情勢が変わっていく戦国時代、誰に付き誰に従いどの道を選ぶのか。その一瞬の判断が生死も国の人々の運命も変えてしまう怖さは十分に感じられる作品だった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
時代小説 戦国・歴史・伝記
- 感想投稿日 : 2019年8月11日
- 読了日 : 2019年8月11日
- 本棚登録日 : 2019年8月11日
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