時代小説版『赤毛のアン』こと<お勝手のあん>シリーズ第二作。
品川宿の宿屋<紅屋>で台所付き女中見習いとして働いているおやすは、料理人の政一に鍛えられどんどん料理の腕を上げ、作業の殆どを任されるようになっている。
それだけでなく、客が少ない日には夕食の膳の仕切りを任されるという大役まで。
まだまだ失敗もあるものの料理人としてどんどん成長しているおやすと、そんなおやすに自分の出来ることをすべて教え込もうとするかのように鍛えている政一。
嬉しいけれど、こんなに急激に様々なことを教えている政一が何を考えているのか、ちょっと不安。まさか台所をおやすに任せてどこかへいなくなったりしないよね…。
前作で友達になった大旅籠<百足屋>のお嬢様・小夜は相変わらず蘭方医の勉強に邁進中。しかし親はそれなりの大店へ嫁がせたいと考えているようで、小夜と父親とは常にギスギスしている。
そして<紅屋>には大旦那の親戚筋のちよが奥女中としてやってくる。彼女は田舎の旅籠の一人娘で、いずれ婿養子を取って旅籠を継ぐことが決まっている。その修業として<紅屋>で働くことになったのだった。
さらには随分高貴な身分らしいおあつ様というお姫様と知り合う。彼女は薩摩からやんごとなき家へ嫁ぐためにやって来たらしい。…?もしかしてあの○姫?
おやすは小夜に自分の道を自由に生きられることを羨ましがられ、自分の代わりに立派な女料理人になることを期待される。
ちよもまた自分が生まれながらにして旅籠を継ぐことが決まっていることに苦しい思いをしているようだ。
しかしおやすから見れば、道が決められているということは不自由でもある代わりに生活が保証されていることでもあり安心感もある。おやすの道は自由ではあるが、自分の腕一つで生きていかねばならないという不安がつきまとう。
どちらが幸せなのか、充実しているのかは誰にも分からない。
一方でおあつ様はちよや小夜とは比べようもないほど過酷な運命にあることを知る。逃げることなど到底敵わない人生、それでもそこと向き合って生きていくおあつ様。
<紅屋>でおやすと同じく料理人修業をしながらも、料理の才より算盤の才がある勘平がある大変な決断をする。その後押しをしたのはちよ?
そして全く新しいスタイルで客を呼び込む料理屋<むら咲>の女料理人・おみね。
色物扱いされながらも料理の腕は確かで、料理番付にも載るほど。その清々しいほど堂々とした姿におやすは衝撃をうけるのだが、おみねから何故か奇妙な宿題を出される。香りの謎解きを嗅覚が人一倍良いおやすは解けるのか?
別れと出会いの季節といった感の第二作。
新たな道へと踏み出す者、新たな道のために頑張っている者、そしておやすの刺激になりそうな女料理人のおみね。
年季明け後の物語になりそうな次の作品ではどんな展開が待っているのか。
- 感想投稿日 : 2021年1月7日
- 読了日 : 2021年1月6日
- 本棚登録日 : 2021年1月7日
みんなの感想をみる