やさしいダンテ<神曲> (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2011年1月25日発売)
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感想 : 42
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相変わらず阿刀田さんの教養書シリーズにハズレはない。ダンテの神曲、こんなにも古典的で分かりにくいものを瑞々しく現代口語で伝えてくれた。地獄、煉獄、天国。ダンテは三つの世界をギリシャ・ローマ神話の登場人物たちや、全然関係ない、かつてダンテが惚れしていた女の子ベアトリーチェの案内によって見て回ることができた。地獄ではキリストの教えに反して最善悪行を積んだ王や神も含めるさまざまな人々がマグマのコンクリートみたいなところに入れられて、ゴブリンみたいなやつらに棒でつつかれていた。怖え。ゴブリン同士の仲間割れみたいなのもみつつ、怯えながら進んでいくと今度は煉獄に辿り着く。そこは静かな離島のようなところ。人は死ぬとまずここに着いて、自分の生きた年数彷徨うことになる。そして、悪行とまではいかないけど良いこともしてこなかった人はここでずっと迷子。時間の感覚を理解できるのは生者だけの特権らしい。そして最後に天国へ。いく層かに分かれていて進めば進むほど光り輝いてまぶしくて見えなくなっていく。マリア、アダムとイヴ、パウロなどなど聖書にでてくる錚々たるメンバーかここに鎮座している。ベアトリーチェもここで光り輝いた。すげー!という、そんな厳かなファンタジー小説だった。宗教学だけでなく、一般ピーポーにとってもこれほど面白い話が、ここまで格式高く聖書に次ぐ教養書のようになっているのもすごく面白い。というか聖書にしてもそうだが、宗教は広める為にある訳だから面白いに越したことはないんだろう。古典的な状態のまま現代まで伝わっているから、現代人にとって読みにくい部分が多いけど、こうして阿刀田さんに解説してもらえると、素晴らしく面白い世界を散歩できた気分だ。やっぱり難しいんだろうけれど、原文にもそのうち挑戦したい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年1月31日
読了日 : 2023年1月31日
本棚登録日 : 2022年12月31日

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