「世田谷事件」の被害者遺族として、そして病で夫を失った妻としての喪失体験と、回復の過程を跡付けた書。
傷ついた人にどう寄り添っていけばいいか、そしていずれ自分にもいずれ訪れる喪失にどう向き合うかを示唆してくれる。
本書の最初に、曖昧な喪失が人をひどく苦しめる、という話が出ていた。
そのこと自体は、とても納得できる。
筆者のように未解決事件で大切な人を失った場合はもちろんだが...曖昧でない喪失というものがあるのだろうか。
病気や老衰であっても、なぜその人が、なぜそのような不自由さや苦しみを味わわなければいけないか、と身近にいる者なら思うだろう。
その意味で、ここに書かれている喪失の悲しみは、決して特殊な人のものでない。わがこととして受け止められる。
悲しみを表現する難しさもこの本は伝えている。
自分の悲しみをうまく伝えられないつらさは、想像できる。
著者入江さんは、その点でたぐいまれな力を持っている人だと思う。
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- 感想投稿日 : 2016年5月28日
- 読了日 : 2016年5月28日
- 本棚登録日 : 2016年5月28日
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