軽い読み物と思いきや、思いのほかの重量級。
テーマは心中。
主人公たちのほとんどは、あまりうまく世渡りするタイプではない。
生きあぐねて、あるいはパートナーの死に直面して、揺らぐ心のありようが描かれる。
「遺書」。愛を確かめるために自殺しようとする妻に残す遺書の形式の短編。
二人のなれそめまでもがそこには書かれているが、妻に翻弄される彼の姿に、何とも言えないおかしみが漂う。
老齢に達した彼が、もし妻が後に残されたら、と考えてこの「遺書」を書くのだが、最後の数行の彼の気持ちは崇高だ。
「星空ドライブ」は、ひき逃げで死んでしまった恋人につきまとわれる大学生の物語。
最初は死んだ彼女が自分のもとにやってきたことに愛情を感じていた佐々木だが、自分が死ぬまでずっとそばにいられることにぞっとし始める。
こういう細やかな心理描写がすばらしい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年3月12日
- 読了日 : 2017年3月12日
- 本棚登録日 : 2017年3月12日
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