この人の作品は、『ミカドの淑女』『女作者』くらいしか読んだことがないと思う。
本作も、そういう系統の―つまり、明治・大正の女性の評伝的小説だ。
朝ドラ「花子とアン」で、白蓮に注目が集まり、その当時、この作品もリバイバルした。
でも、二十年以上前、94年の作品だったとは。
宮崎家、伊藤家への取材も行い書かれた本だからか、二人の男性は好意的に描かれているようだ。
しかし、本作のメインは、やはり白蓮の心理描写だろう。
東洋英和での暮らしを理想化し、世間知らずだった彼女が、他の女性との幸不幸を引き比べ、嫉妬という感情を身につけていく。
自分の秘密を打ち明けるべき相手を、自分のプライドと天秤にかけながら選び出す。
この女性の不幸を、作者はこういうものとして描き出したのだろう。
興味深かったのは、あの有名な決別状が、白蓮自身のものでなく、宮崎龍介の仲間の手が入ったものだったということ。
そこは事実なのか、作者の創作なのか分からないけれど。
それから、九条武子も駆け落ちを企てようとしていたというのは、驚いた。
もし実現していたら、白蓮事件など霞むほどの、歴史を変える事件になっていたに違いない。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2017年3月25日
- 読了日 : 2017年3月25日
- 本棚登録日 : 2017年3月25日
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