孔子伝 改版 (中公文庫 B 20-5 BIBLIO)

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  • 中央公論新社 (2003年1月1日発売)
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感想 : 32

やっぱり難しかった。
『論語』は通読していないものの、ある程度は読んできたし、解説書も何種類も読んだ。
井上靖『孔子』なども読んだというのに、何だか、ちっとも孔子のことが分かっていないのではないか、と不安に駆られた。

本書のエッセンスは、第五章の最後の節、「大なるかな、孔子」に集約されている、と感じる。
ノモス的社会が成り立つ中で、「仁」という一つの理想主義を掲げた孔子は受け入れられることなく終った。
強烈に自己主張する道をとらず、自分の思想を探求するために「巻懐の人」となることを選んだ。
ここが、白川さんの考える、孔子の偉大さだと思われる。

孔子の生涯について述べられているのは、第三章までが中心。
巫祝の子であった孔子が、亡命生活の中で磨かれて、思想家として大成するものの、顔回を亡くしたことで、思想的な後継者を喪ったことが書かれていた。

第四章は、後代の孔子の批判者として世に現れる墨家と、荘子について取り上げられていた。
個人的にはこの第四章が最も読みやすかった。
「義」を掲げ、儒家の「仁」の狭量さを批判して「兼愛」を主張する墨家は、白川さんに言わせると、儒家の「仁」の概念と似ている、と。
一方、絶対論で知られる荘周(荘子)は、むしろ顔回経由の儒家思想に近い思想だとされていた。
むしろ孟子と同時代の孟子への強烈な批判があって、儒家と対立したと考えているようだ。
孟子は・・・あまり評価が高くないようだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年2月16日
読了日 : 2013年2月12日
本棚登録日 : 2013年2月5日

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