逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社 (2005年9月1日発売)
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本棚登録 : 2690
感想 : 212
5

大変な労作だなあ、と、ただただ感じ入った。
近代に入って失われた、過去の日本の「文明」のありようを明らかにしようとした本。
人々に漲っていた陽気さ、好奇心。
性的に放埓で、うそつきといった側面もありながらも、仕事に対しては忠実な人々。
これまでにも明治以前の時代を説明した歴史系の本は読んできたけれど、人々の持つ雰囲気までは分からなかった。

筆者は、近年のオリエンタリズム批判を意識して、自分が過去の日本をただ理想化しようとしてはいないと強調している。
そして、随所で一つのイメージに収斂しすぎないように、対立的な、あるいは別の見解に結びつくような資料も丁寧に取り上げていた。
「ありのままに」逝ってしまった世を見ることはできないことを自覚しつつ、当時の外国人たちに記録された美しさを確かにあったものとして捉えていく。
その「美しさ」には、やはり魅了されずにはいられなかった。

以前、森まゆみさんの『鴎外の坂』を読んだ。
そのとき、明治初期の東京の自然の美しさに目を瞠った。
そのときは、それは二人の森(鴎外、まゆみ)の筆力のなせる業かとおもったけれど、本書を読むと、やはり「確かにそこにあった美しさ」だったのだとも思わずにはいられない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年10月14日
読了日 : 2014年10月14日
本棚登録日 : 2014年10月14日

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