深い疵 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2012年6月22日発売)
3.85
  • (47)
  • (112)
  • (55)
  • (10)
  • (2)
本棚登録 : 680
感想 : 96
4

良質の警察ミステリ。物語の方向性はシンプルなのだが、中身は濃くて、色んな要素が複雑に絡み合っている。根っこの深さに驚愕するなかれ。矢継ぎ早に出てくる人名と地名に混乱しないように。

名門一家、隠された過去、ナチス──陰惨さを予想させるキーワードがベースになっているが、冒頭からの事件が派手に前進することで謎解きとのバランスが保たれおり、想像したような重苦しい雰囲気にはならない。

中盤辺りですでに満腹なのに、そこから更に方向転換をして突っ走るスタミナに翻弄させられた。そして“疵”の意味でクラッシュする。小説と割り切っていても、あの時代だったらアリだったかもと、ナチを知らないだけに想像力だけ逞しくなり、そしてしばし凹む。作中のナチに対して、もう少しこってりしたアプローチがあるのかと期待したが、人物造形のピースとして扱われてるようだった。もう一点残念だったのは、真犯人が判明するプロセス。それまでの捜査はなんだったのか?

本作品はシリーズ三作目。四作目もすでに刊行が決まり、評価次第では一作目から順に訳すとのことだが、前作で何かあっただろうなと思わせる人物間のやりとりが出てくるので、もったいぶらずに順番に読ませて欲しいところではある。今年は警察ミステリの当たり年かな?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外ミステリ
感想投稿日 : 2012年8月9日
読了日 : 2012年8月9日
本棚登録日 : 2012年8月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする