ダーティーな刑事が、裏切者の枠の中でもがき踏み止まろうとするストーリー。ミステリ要素はほとんどない。彼らは汚職で手にした金で贅沢するのではなく、子供たちをいい大学に通わせるための資金にしようとするなど、あくまで目的は現実的。少し前に見た海外ドラマ『シェイズ・オブ・ブルー』を連想してしまう。下巻に入った辺りから徐々に歯車が動き出す。
そこで描かれるのは、腐敗の底なし沼と圧倒的なリアリズム。マローンが目指すところは、ニューヨークの犯罪組織を根こそぎ撲滅することではなく、犯罪組織を管理し現状を維持すること。このスタンスに現場の警察官のハードさがよく表れているように、作者の刑事に対する共感や敬意が本作品の根底にある。巻頭に列挙された殉職警察官のリストは印象的。
帯には”犬の力 ザ・カルテル すべてはこの作品のプロローグに過ぎなかった!”とあるが、それは過大評価。スケール、熱量、どれをとっても二作品の方が上回っている。マローンのキャラにしても途中から「刑事の王」に見えなくなってきたし、ツッコミたくなるシーンもちらほらあったかな。
ジャンルとしてはノワールでしょう。これを「警察小説」とすると、汚職刑事を肯定するようでイヤなので、個人的には犯罪小説として読んでほしいです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
社会派ミステリ
- 感想投稿日 : 2018年5月13日
- 読了日 : 2018年5月13日
- 本棚登録日 : 2018年5月13日
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