ここで終わられると、ひどくずーんとした読了感に…。
子供の虐待や学生の非行、家族殺しなど、色んな社会問題を背景に、多視点で話が進む。
児童心理司である游子、刑事の馬見原、美術教師の巣藤、、、。
それぞれの立場と背景が一幕ずつ回転して、それぞれの過去と問題が明らかになっていく。
メインの三者の価値観はそれぞれだけど、それぞれ相手をまだちゃんと見ていないように思える。
淑子…子供の安全をとにかく最優先。男女平等をモットーにしていて、男性がいつも使う言い訳が大嫌い。協力的でない、責任を取りたがらない、子供の虐待の深刻度を楽観視する周りの人間に噛みつく感じが分かりやすく表現されている。
戦争によるやり場のない怒りとストレスの捌け口にされた馬見原は息子の死亡、娘の非行、義母の介護を妻に押し付けた結果、妻は精神疾患で自殺未遂。そんな問題に目を背けるように別の家族に逃げている。
淑子は児童心理司として複雑な家庭で虐待を受ける子供達を救おうと奔走し、周り(特に男性)に対して正義を振りかざす。
巣藤は高校教師として働くも、生徒の非行問題、モンスターペアレントに教師が対峙することが嫌でたまらない。家族を作ることに否定的な彼は、恋人の妊娠、出産宣言に動揺したり、自分を襲ったと嘘を付く生徒に振り回されたり、隣人の死体を発見したり…。。。
プライバシーの保護、人権の尊重、差別撤廃や平等の精神。
まだまだ男女平等とは言えない雇用形態、進まない女性役員率、育児に非協力的な男性、過保護でしつけや責任をを学校に求める母親、何かすればセクハラ、パワハラと叫ばれる。
世の中で尊ばれる事を遵守すればするほど、家族の中が見えなくなり、息苦しくなり、周りに助けを求めづらくなっているのは気のせいかな?
価値観が短期間で急激に変わったために、世代間の衝突が激しくなっている気がする。
(一方的でない)話し合いができる家族が理想だなー。
- 感想投稿日 : 2019年5月8日
- 読了日 : 2019年5月8日
- 本棚登録日 : 2018年8月14日
みんなの感想をみる