ウォーラーステインが提唱した「世界システム論」では、大航海時代がもたらした世界的交易を起点に、世界は政治・経済や社会的差異を超えて一つの「システム」と化したとされる。
そして、16世紀に成立したこの「近代世界システム」が、覇権国家をオランダ→イギリス→アメリカと変えつつ、今日まで続いているというのがウォーラーステインの見立てであった。
本書はこの「世界システム論」をふまえたうえで、ヨーロッパが覇権を握る以前の13世紀に「もう一つの世界システム」が成立していた、とする。
そして、著者は膨大な史料を渉猟し、13世紀半ばから14世紀半ばまでの約100年間の世界史を鳥瞰するなかで、その「13世紀世界システム」の概観を浮き彫りにしていく。
昨年逝去した著者が1989年に上梓した本の、普及版による復刊。世界史を地球規模でわしづかみにする「グローバル・ヒストリー」の、先駆的な試みの一つである。
基本的には専門書だから読みやすいとはいえず、上巻を読む間はなかなか入り込めなかったが、下巻に入ると面白くなってきた。
欧米の歴史家にとって、「西洋中心史観」は宿痾の如きものであろう。本書は、その宿痾から自由であるという点だけでも評価に値する。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2018年10月14日
- 読了日 : 2014年3月22日
- 本棚登録日 : 2018年10月14日
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