本書を含め、小林エリコがこれまでに出したエッセイ集を私は全部読んでいる。
(ほかに、『この地獄を生きるのだ』『わたしはなにも悪くない』『家族、捨ててもいいですか?』『生きながら十代に葬られ』)。
5冊とも、彼女自身のこれまでの人生が素材である。
それぞれに異なる角度がつけてあるし、文章の使い回しなどはないが、それでもエピソードの重複は随所にあり、さすがにマンネリ感がある。
本書に出てくる話も、デイテールはともかく、大枠としては既知のエピソードが目立つ。
本書の場合、タイトルのとおりフェミニズム的な色付けがなされているので、それが旧著とは異なる角度づけになっている。
幼少期から近年に至る人生に起きた出来事が、フェミニズムの観点から捉え直されているのだ。
ただ、精神を病んでデイケアに通うようになってから、そこで出会った彼氏「よっちゃん」との日々は、エッセイ集では初めて明かされたものだと思う。
かなりの紙数を費やし、赤裸々に綴られる2人の関係は、なかなかすさまじい。「私たちはきっと、最低で最悪のカップルだったと思う」(145ページ)とあるとおり、恋愛らしいロマンティックなムードなど微塵もない。
著者はこの彼氏(とすら呼びにくい)との関係を、よくぞ書いたと思う。私小説書きにもここまでは書けない。
著者が出会ってきた男たちが(家族も含め)あまりにひどすぎるので、読んでいてつらくなってくる。
それでも、とてもリーダブルであり、印象深い読み物に仕上がっているのは、著者の筆力の賜物だろう。
- 感想投稿日 : 2021年7月28日
- 読了日 : 2021年7月28日
- 本棚登録日 : 2021年7月28日
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